相続・事業承継2019年4月1日時点の法令に基づく出題です
2019年9月 FP2級学科 問60
非上場企業の事業承継対策に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 1オーナー経営者が保有している自社株式を役員である後継者に取得させる場合、後継者にとってその取得資金の負担が大きいときには、あらかじめ後継者の役員報酬を増加させるなどの対策を講じることが考えられる。
- 2自社株式の評価額を引き下げるためには、積極的な費用計上を行って利益を圧縮することや、新規取引先に対する金銭債権のうち回収可能性があるものについても債権放棄により貸倒損失を計上することなどが望ましい。
- 3オーナー経営者が死亡したときの相続税額の負担を軽減するため、その経営者が保有する自社株式の大半を経営に関与しない第三者に生前に移転しておくことが望ましい。
- 4「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の対象となる非上場株式は、後継者が受贈前にすでに有していた非上場株式を含めて、発行済議決権株式総数の2分の1に達するまでの部分に限られる。
正解と解説AI解説
正解 肢1
本問の論点
非上場企業の事業承継対策として何が適切かを問う問題である。後継者の資金負担への備え、自社株式の評価額の引き下げ、株式の移転先、そして贈与税の納税猶予の特例における対象株式の範囲という四つの観点から、各肢を判断する。
正解の根拠
自社株式を後継者に取得させるときは、後継者に取得資金を用意する力が必要になる。資金の負担が大きい場合には、あらかじめ後継者の役員報酬を増やして手元資金を厚くしておくことが、現実的な備えとして考えられる。したがって肢1の記述は適切であり、ほかの肢にはそれぞれ誤りがある。よって、正解は肢1。
各肢の検討
肢1:役員報酬を増やして後継者の資金力を高めておく対策は妥当であり、適切。
肢2:回収可能性のある金銭債権まで債権放棄して貸倒損失を計上することは、貸倒れの実態を欠く処理であり、望ましいとはいえず不適切。
肢3:経営に関与しない第三者へ株式の大半を移すと、後継者の議決権が確保できず経営が不安定になるため、不適切。
肢4:特例措置の対象株式に「2分の1に達するまでの部分に限られる」という上限は存在しないため、不適切。
一言まとめ
承継は資金面と支配権の両面で考える。株価対策は実態のある範囲にとどめ、議決権は後継者に集めておくのが基本である。
一問一答各肢の正誤
○肢1オーナー経営者が保有している自社株式を役員である後継者に取得させる場合、後継者にとってその取得資金の負担が大きいときには、あらかじめ後継者の役員報酬を増加させるなどの対策を講じることが考えられる。
後継者の取得資金の負担が大きいときに、あらかじめ役員報酬を増加させて資金力を高めておく対策は、承継を円滑にする現実的な備えであり適切である。
×肢2自社株式の評価額を引き下げるためには、積極的な費用計上を行って利益を圧縮することや、新規取引先に対する金銭債権のうち回収可能性があるものについても債権放棄により貸倒損失を計上することなどが望ましい。
回収可能性のある金銭債権まで債権放棄して貸倒損失を計上することは、貸倒れの実態を欠く処理であり、株式評価額の引き下げ策として望ましいとはいえない。
×肢3オーナー経営者が死亡したときの相続税額の負担を軽減するため、その経営者が保有する自社株式の大半を経営に関与しない第三者に生前に移転しておくことが望ましい。
自社株式の大半を経営に関与しない第三者へ移すと、後継者の議決権が確保できず経営が不安定になるため、望ましい対策とはいえない。
×肢4「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の対象となる非上場株式は、後継者が受贈前にすでに有していた非上場株式を含めて、発行済議決権株式総数の2分の1に達するまでの部分に限られる。
特例措置の対象株式に、2分の1に達するまでの部分に限るという上限は存在しないため、上限があるとする記述が誤りである。
出典:日本FP協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験 2019年9月 問60 を加工して作成。本サイトは非公式の学習サイトです。
解説は2019年4月1日時点の法令に基づきます。基準日以降の改正が反映されていない場合があります。本サイトの解説は学習補助を目的とし、税務・投資・法律に関する助言ではありません。